君を失うのが怖かった
皆さんは乃木坂46の『今、話したい誰かがいる』 という曲を知っているだろうか。
映画『心が叫びたがってるんだ。』の主題歌に起用され、『心が叫びたがってるんだ。』の脚本を担当した岡田麿里が秋元康に映画の内容を説明することによって作品に沿った「ドンピシャの歌詞」(映画プロデューサー・斎藤俊輔の言葉より)が書き下ろされ、映画のストーリーとつながる構成になっている曲だ。
乃木坂46史上初のダブルセンターを採用し、センターにはまいやんこと白石麻衣となあちゃんこと西野七瀬が務めたことでも有名な曲だ。
歌詞ってのはどこかとても共感できると頭から離れなくなる。
この『今、話したい誰かがいる』という曲も僕にとってそのような曲の1つである。
その歌詞の一節とともに僕の考えを共有したいと思う。
今までならきっと逃げてただろう
君のことを失うのが怖い
片思いなら黙っていればいい
両思いなら気づかなければいい
話したい誰かがいるっていいもんだ
『今、話したい誰かがいる』歌手:乃木坂46 作詞:秋元康 作曲:Akira sunset・APAZZI
僕はこの一節を聞いた瞬間、胸が締め付けられた。
というのも、僕のこれまでの恋愛がそのような感じだからだ。
友達以上であるが恋人でもない。
この時が個人的に一番楽しいと思う。
だからこそ、その楽しさにかまけてしまう。
友達以上恋人未満の相手との会話は楽しい。
一緒にいるだけで落ち着くし会話の弾み方も普通の人とは違う。
僕はそのような関係になった人を失うのが怖かった。
どういうことか。
つまり、そのような人と付き合うのが怖かったのだ。
周囲を見渡せば付き合ったと思ったらすぐ別れたり、
絶対別れないと言われていたおしどりカップルが別れたり・・・。
そう、付き合うことは本質的に別れることなのだ。永遠の愛なんてないんだ。
思春期の僕は少ない脳みそでそう悟った。
そのあとの僕は完全にこじらせていた。
仲良かった子が告白してきた時、何も言わずその返事を4ヶ月後まで延ばしたり。
別の子であれば、周りの友達からすれば明らかに付き合っている状態にもかかわらず、
告白はせず(つまり、付き合わず)1年以上その関係を続けた。
自分がもしくは相手が友達以上恋人未満という二人のバランスを
少しでも進めてしまわぬように、壊さぬように。
なるべく恋愛話にならぬように気をつけ、いい雰囲気になったらあえて話をそらしたり、相手の部屋に行っているにも関わらず手を出さなかったりと。
片想いなら黙っていればいい。ただの勘違いということにしておこう。
両思いなら気づかなければいい。だって気づいてしまったらそれは最終的にこの人を失うことになってしまう。
そうだ。今のままがいい。
そう思っていた。
結局そのあと、そのバランスをどちらかが壊してしまい、今その子たちとは連絡をとっていない。
あんなに大切だと思っていたのに、だ。
今考えると、大切にしたいと思うがゆえにその人を傷つけていたのかもしれない。
誠実さだと思っていたことは実は不誠実だったのだ。
もしかしたら、「今までならきっと逃げていただろう」と言って関係性を進めれば
本当の意味で相手を大切にできていたのかもしれない。
ただ、あの頃の僕は確かに君が大切で、好きで、失うのが怖かった。
そんなことを『今、話したい誰かがいる』を聴きながらふと思った。